東原小学校防災授業のお手伝いをさせていただきました

      災害用トイレの説明
      災害用トイレの説明

平成30年度座間市立東原小学校(東原2−6−1)からの依頼を受けて3か月間(月1回:2コマ)の授業を続けてきました。

コマ数が限られている小学校をはじめとする学校防災教育はかなり厳しいものですが、大規模災害の発生が近づいていると言われている中で子どもたちに「災害」のことを正しく伝える必要があるということで引き受けをさせていただきました。

事前の学校との打ち合わせで、座学+体験を組み合わせた授業構成を要請されましたので、5年生の体力や経験すべきことをメンバーで検討をして学校へレッスンプランを提出させていただきました。5年生 4クラス 全員で110名という授業ですので、授業の進行管理に細心の注意を払いました。

 

 今回の授業のテーマは、災害時に最も必要な基本要素を学ぶということから、

① 「いのち」をまもる

② 「出す」(排泄のこと)

③ 「飲む」(災害後の後の水を考える)

④ 「食べる」(災害食のこと)

を学ぶこととしました。

 

 第1回目は、11月21日(水)に行いました。

2つのグループに分かれて、①防災倉庫探検隊 ②「出す」を考える(災害用トイレ)について学習をしました。

学校の校庭の隅に設置してある「防災資機材庫」があります。5年生ぐらいになるとこのアルミの箱の中には何が入っているのかな?と関心を持っていると思います。しかし、学校ではこれらの物を教育の材料(教材)としていないようです。残念ながら、この学校の倉庫は、道路に面している関係ですぐそばに寄ってみることができませんでしたが道路の歩道のふちに立って中を観察しました。その後、2つのグループに分かれて、1グループは、資機材庫から運び出した、子どもたちでも扱うことが出来るような資機材を校庭の中庭に並べて実際に触って、動かす体験や、担架を広げて傷病者役の友人を運搬する体験なども行いました。

休憩後、グループは交代して

避難所が開設されたときに設置される「災害時用マンホールトイレ」の組み立てと、その仕組みと座り心地を体験しました。災害の時に一番最初に困るのは「排泄」なのです。これだけはどのようなことをしても我慢はできません。そのようなとき、普段の時には鉄の丸い蓋が5個並んでいるところに、簡易テントが5個、便座が5個セットされて非常用のトイレが準備されます。これは、スフィア基準という国際的な避難所に定められている男子用トイレ1個に対して女性用トイレは3個という基準でセットされています。もう一つは、身体障がい者用のトイレとなります。災害用トイレの使い方についても説明しました。このような体験は、確実に災害に巻き込まれる世代の子供たちに記憶してほしいと思いました。

 

 2回目の授業は、12月6日(木曜日)に行いました。

すでに天気予報では下り坂、雨が降ることが予想されていました。学校と相談して「飲む」:水の確保と運搬の実技は変更して「災害クロスロードゲーム」を行うことにしました。

 

「いのち」を守る➡ 座間市の防災活動のキーワードは「生き残らなければ何も始まらない」ということにあるので「シェイクアウトの安全行動」の確実な実施を学ぶ、発展段階で「緊急地震速報」を信じよう。必ず安全行動をすることこそが「生きる」ことに繋がる。空振りでも「ラッキー」と思うようにするということを伝え、3・11の時の、石巻市での震度6強の録画映像を見てもらいました。座間市を襲う次の地震の最大震度想定はこのような揺れが起きてしまうことを知ってもらいました。

 動画を見ていた子供たちの顔は「驚き」しかありませんでした。5年生は11歳ですので、7年9か月前には4歳児でした。したがって、東日本大震災を招いた座間市での震度5弱の揺れは記憶にないと思います。この揺れが来るのです。

休憩時間中に児童が私のところに来て「本当にあんなに揺れるのですか?」と心配そうな顔をして聞いてきました。「そうだね。君たちは確実にあのような揺れに会つてしまうの。だから、怪我をしないように家の中の安全をしっかりして、揺れから身を守る行動をとらなければならないんだよ」と説明しました。可哀そうな気持ちもしました。しかし、この年代にはきちんと受け止めて欲しいと思いました。

 

その後、8グループに分かれて「災害クロスロード」ゲームをしました。クロスロードとは「十字路」「分かれ道」などといわれます。災害時に起きてしまった事象を読み上げ、その意味を読み取って、イメージしそう思うのであれば「YES」の札を、違うと思ったら「NO」の札を出し、その理由をみんなの前で発表するゲームです。発表されて意見が、自分と異なっても絶対に「非難」しないことが基本ルールなのです。究極の場面には、正解はないのです。時々の判断で」身を処していかなければならないのです。

問題は、比較的易しいものを選びました。

しかし、私たちが勝手に作った問題ではなく阪神淡路震災以降の災害から学んだ記録をまとめた「一日前プロジェクト」という報告書の中から作られた問題で判断をしてもらいました。

ゲームにはなれている子供たちでしたので、要領をつかみさえきちんとすれば興味を示して熱心に考えて解答をだす努力をしていました。「多数決の原則」で勝敗を決めて、勝った人には、おはじき1個を獲得できるルール、グループの中で一人だけ「異なる」解答をした人は「一人勝ち」としておはじきを5個獲得できるルールを採用しました。

多数意見を取った人、少数意見だった人は「なぜその答えになったのか」理由を発表してもらいました。

一人勝ちを取った児童になぜその答えになったのかの理由を聞くと、多少、屁理屈ぽい答えですが、なんとなく納得してしまう答えを導き出すのには驚きました。盛り上がった授業でした。災害をイメージすること、同じ事象を見ても自分とは異なる意見の人もいることを知ってもらうこと、一概に非難することは出来ないということを学んでくれたら良いなと思いました。

 

最終回の1月25日(金曜日)の授業は、長時間の授業でした。

「非常用炊出し袋」を使った災害時の「食」を考え、体験する「食う」を学んだあと、防災ゲーム「ナマズの学校」を行いました。

調理実習室の収容定員は、1クラスで使うスペースですが、ここを何とか2クラスの児童を入れて午前1回、そののちに、防災ゲームを行うという、同じ内容の授業を2回繰り返すことにで取り組みました。

ナマズの学校は、カードゲームですので、スペースも必要になりますが、何とか55名の児童で9グループを作って取り組みました。各グループに1名のファシリテーターが必要になりましたが、スタッフの手配に苦労をしました。SL仲間のつながりで応援者を確保して取り組む目途が付きました。

 

炊出し袋は、当初は全員が炊出しを行うということでしたが、給食時間が真ん中にある関係上100g炊飯でも食べ残しがあると困るということで各グループで1つの炊出し袋を使って炊飯するという方法を取りました。

炊出し袋を使った炊飯については、何故このような方法を取るのか、炊飯にあたって一番大切なことは何なのかということを事前に説明して、2グループごとに体験をしてもらいました。米をメジャーで正確に測る、水は、コメの1.2倍の量であることを学び、空気をしっかりと抜いて、口を輪ゴムでしっかりと縛るという体験をしました。これも、グループによって速度が異なるので進行管理が大変でした。

 

 その後、教室を移動して、防災ゲーム 「ナマズの学校」をしました。このゲームは、事前の準備が大変です。前日、打ち合わせと準備作業を行い備えました。インストラクターはメンバーのHさんにお願いしました。

 

 ゲームの組み立ては、普段生活している空間で、災害に遭遇して児童が「助ける人」として活動することを想定したゲームです。助けるために使える道具を街の中から探してくるという想定で、各人に渡された「道具カード」の中から、一番ふさわしい機材を探し出してカード置き場に出して、その出したカードを評価して得点「なまーず紙幣」をもらえるというものです。

児童はスクリーン上に出された問題とにらめっこで、自分の持ち札の中から適当と思う候補のカードを選び出しカード置き場に出す児童がいる一方、勢いでパット出す児童、なかなか決まらない児童、適当な持ち札のない児童などがいます。品物を考える基準は「すぐに手に入りやすい物」「使いやすい物」にしてあります。

このようにしてゲームを進行しながら、何故それがふさわしいのか ふさわしくないのかについて解説をします。そのようにして、「50なまーず」から「90なまーず」の得点をファシリテーターから受け取ります。だんだん白熱してきますが、残念ながら授業の終わりの時刻は決まっています。4問から5問程度を解いて終わりになります。そして、各自の得点を計算して一番多く得点した児童は起立して、全員から拍手の祝福を受けました。

 

 ゲームの時間を使って、調理室ではご飯が炊きあがるころになります。調理室に戻り、試食をします。この時、学ぶことは災害時には「水が止まってしまう」ということをイメージさせることが大切なのです。手が洗えません。そこでアルコ―ルスプレーで手指の消毒をします。そして、グループごとに分かれてテーブルに着いて、まず最初に、ビニールの袋で食器を被います。よく「サランラップ」でといわれますが、子どもたちには無理です。サランラップの上を手指で触ることはそれだけ食品が汚れてしまいます。私たちは13号のビニール袋を裏返しをしながら食器を被うことを教えました。その上に炊き上がったご飯の袋を切って出して、箸で人数分に手早く分けて試食をしてもらいました。教室のあちらこちらから「あっ 炊けてる」「おいしい」「お釜で焚いたのと変わらない」というような声がありました。この方法を取れば、水がなくてもご飯は炊けるのです。水がなければジュースでもコーラでもできます。食べ終わっても洗う水もありません。食器に掛けた袋を取り外せば洗わなくても次に使うことができるのです。

大切なことは、災害時にはアルファー米という図式から抜け出さなければなりません。普段食べているものが一番なのです。米というものは本当に尊いものです。

この袋は、全国では座間市と船橋市の市役所の売店でしか売っていません。この袋を、米櫃の中へ入れておけば安心できます。そのようなことを解説をして授業を終わりました。

 

 3回の防災授業でした。真ん中の水に関する授業は雨のために体験できませんでして。残念です。また機会があれば体験してもらえると嬉しいです。

小学校5年生が出来ることは、限られているかもしれませんが、ちょっと工夫すれば出来ることはたくさんあるはずです。「防災」という言葉は非常に概念が曖昧です。

だから、先生方はLesson Planも出来ないのです。しかし、生き残り、生き延びるためには何をどうしたら良いのか・・・その時、子どもたちが担うことが出来ることをヒントを示して、工夫することができれば子どもは「助けられる」対象ではなく「助ける」人となって災害を乗り越えることができると思います。

 

 災害を考えるということは、「被害をイメージ」できるかどうかにかかってきます。そのイメージをどのようにして伝えるか・・そして、やって示すことが必要です。防災は教育では伝わらないとも言われています。要は、先生の背中を見て育つ「感化力」だと思います。

私たちの仲間にも防災、減災について熱心に取り組んでいるメンバーがいます。そのお子さんは大人が太刀打ちできないほどの知識と、技を持っています。このような子供たちが増えなければ、災害後のまちを復興させる力がない町になってしまいます。

 

こんな授業を市内全部の学校で取り組んでいただければ、大人も刺激を受けると思います。「地震だ火を消せ」という時代ではなくなりつつあります。そうではなく地震が来たら、「火から離れる」ことが大事なのです。この意味を理解できない「大人」は如何に現世の進歩から遅れている人だと思います。

柔らかな頭の中に、しっかりと知識だけではなく体験授業的な観点から学ばせる必要があるのではないかということを感じました。

 

私たちも、学ぶことが多かったです。わが子の時には、企業戦士として家庭を顧みずに仕事にかこつけて見捨ててきましたが今、その罪を贖う思いで取り組んでいます。

どうか、次に来る災害の中で彼らは、生き残り、私たちを助けてもらいたいとも思っています。

ありがとうございました。(またまた、長文でごめんなさい)